第179章 彼女の機嫌を損ねた

阿部先生が席を譲り、神保淵は神野若芽の向かいに腰を下ろした。

胸の内は浮き立っているのに、状況が飲み込めず、霧の中にいるみたいだった。

「先、当てて」

「はい」

囲碁は先番を決めるために、先を当てる。

神野若芽が碁笥から適当に石をつかんで握り込み、神保淵が奇数か偶数かを答える。

「偶数で」

神野若芽が手を開く。掌には、四つの碁石。

神保淵の当たりだ。黒番で初手を持つ。

神保淵は定石どおり星に置いた。するとすぐ、神野若芽の白が盤上に落ちる。

——ほんの少しで、神保淵は自分の惨敗を予感した。

最初から最後まで、どれだけ足掻いても、負けた。

神野若芽が部屋を出ていったあと、...

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