第183章 一手置けば、即座に一手奪われる

昼間のことが、ふいに脳裏をよぎった。

阿部先生と丸々16時間も斬り合い、刃のように鋭く、凍てつくほど冷たい棋風で、まるで戦場で無敗の戦神みたいに相手を震え上がらせた――あの伝説級の棋士。

神野若芽なのか?

ありえない。

その背筋が凍る発想は、即座に打ち消された。

神野唯臣が先ほど言っていた通りだ。伝説級の域なんて、何十年も積み上げて、ようやく辿り着く場所。

神野若芽は囲碁が打てるだけで、まだ18歳。あんな化け物と比べられるはずがない。

――だが。

1分後、神野若帆がどれだけ不服そうにしても、惨敗という現実だけは変わらなかった。

「くそ……」

田舎者が囲碁を打てるだけでも腹...

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