第207章 現場アカペラ

だが彼は知っていた。神野若芽が帝都に、相当な数の事業を持っていることを。

――そう考えると……確かに、面白くない。

「江口岩司は最近、ずいぶん伸びてますよ。彼の試合を見に行けば、そこまで退屈もしないかと」理事はなおも取りなすように言った。

「ふふ」神野若芽は淡く笑い、湯呑みに口をつける。

理事は内心で思う。もし江口岩司が今の反応を見たら、きっと落ち込むだろう、と。

もともと江口は、世間を騒がせた『天才音楽少年』だった。幼い頃から海外のコンクールに出ては賞をかっさらい、数え切れないほどの栄冠を手にしてきた。

それが人気歌手になってからは、なおさら鼻が高くなった。プライドが天井知らず...

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