第60章 聞かなかったでしょ

やはり――自分が目をつけた少女は、ただ者じゃない。

権田真鳥はICUの様子を確認した。ベッドの上のお爺さんは目を閉じたまま。麻酔がまだ抜けきっておらず、意識は戻っていない。

権田真鳥は廊下でずっと待機していた。しばらくして、寺内七造が弁当の入った袋を提げてやって来る。

「爺、頼まれてたやつです。俺の分はもう食いました。ここは俺が見てるんで、お爺さんのそばにいるなら、爺は先に食ってください」

寺内七造は察していた。これは神野先生と一緒に食べるための二人分だ、と。

だからこそ、余計なことは言わない。

権田真鳥は弁当を受け取り、神野若芽の病室の扉をノックした。

神野若芽ははっと目を覚...

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