第75章 夢のように

ワタキミ。

それが神野若芽のペンネームだ。

しなやかな指がスマホのキーボードを軽やかに走り、素っ気ない一言が飛ぶ。

「何」

編集は通知を見た瞬間、興奮で机の上のコップをひっくり返した。水が広がるのも構わず、慌てて返信する。

『お嬢様、いま更新できます?』

「お嬢様じゃない」

編集は指を止め、固まった。数秒悩んで打ち直す。

『あんちゃん、いま更新できます?』

「女です」

編集『……』

『では、ワタキミ様。いま更新できます?』

「気分次第」

編集『……』

編集は、ちょっとムッとした。

「うわ、2億いった!」編集長がまたもや裏返った声で叫ぶ。「夢じゃねえよな!? サイ...

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