第91章 適当に弾いたの?

神野若奈は胸の内でほくそ笑みつつ、表向きは聞き分けのいい顔を作った。

「私は別にいいけど……若芽姉さんがね。本人、習う気あるのかなって」

「あるもないもないよ」

神野お婆さんは若芽に一言も確認しないまま、勝手に決めた。

夕食を終えると、夜の自習まであと三十分。

若奈は若芽の手首をつかむようにして自室へ引っ張り込み、ピアノの前まで連れていく。譜面を三冊取り出し、そのうちの一冊を若芽へ差し出した。

「若芽姉さん、これ……読める?」

若奈にとって若芽は、勉強も何もしてこなかった人間だ。わざと難しい譜面を選んだのは、恥をかかせるため。

若芽は譜面をちらりと見ただけで、すぐ視線を引っ込...

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