第10章
西園寺古里の視点
引き金にかかった彼の指が震えていた――かつて私の顔を優しく撫でたその手が、今は小刻みに震えている。私は黒木直樹の瞳を見つめた。そこには絶望と苦痛、そして最後の微かな希望の光が見えた。
喉が締め付けられるようだった。警察のスナイパーは配置につき、赤いレーザーの点が彼の額で踊っている。私が一言でも間違えれば、彼らは引き金を引くだろう。
「自分を囚えた相手を、愛せる者などいるだろうか」
その一言一言が、刃物のように私自身の心を切り刻んでいく。
黒木直樹の顔に、苦い笑みが浮かんだ。今まで見た中で、最も痛々しい表情だった。
「……やっと分かったよ」
彼は囁い...
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3. 第3章
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