第4章

綾乃礼央視点

瀬川紀子が、意味ありげな笑みを浮かべて戸口に立っていた。

「お邪魔だったかしら?」

私はゆっくりと立ち上がり、彼女の視線など気にしていないかのように服を整えた。空栖の顔はトマトのように真っ赤になっている。

「お祖母様……」

彼の声は弱々しい。

「どうしてここに……」

「お二人とお話があってまいりましたの」

瀬川紀子は何も見なかったかのように優雅に入ってきて、言った。

「礼央、お庭を散歩しましょう」

それはお願い――ではなく、命令だった。

私は空栖をちらりと見てから、瀬川紀子の後を追った。

屋敷の薔薇園は午後の陽光を浴びて咲き誇り、優しい風...

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