第6章

綾乃礼央視点

二十分後、ガレージの中。

嵐の音は先ほどよりはっきりと聞こえ、私の心臓は狂ったように高鳴っていた。空栖の車椅子を押してガレージに入ると、薄暗い照明の中に高級スポーツカーがずらりと並び、鈍い光を放っているのが見えた。

「あの黒い車だ」

空栖は隅に停められた一台のマッスルカーを指さした。

「俺の車だ。改造してある」

「改造?」

私は訝しみながら、彼の車椅子をそちらへ押していく。

「手動運転装置だ」

空栖の瞳に複雑な感情がよぎった。

「事故の後に付けさせたんだ――体が不自由でも運転しやすくなる」

私は凍りついた。

「運転、できるのか?」

「当た...

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