第7章

 ダイニングに沈黙が降りた。

 聞こえるのは、鈴木はるかが林檎を齧る「シャクシャク」という音だけだ。

「あのー」

 鈴木はるかが手を挙げた。

「感動的なところ悪いけど、この林檎食べ終わるまで待ってていい? で、今はどういう状況? これがいわゆる『逃げた女房を死ぬ気で追いかける』ってやつ?」

 私と龍崎圭は顔を見合わせた。

 彼の瞳には、私を溺れさせそうなほど濃厚な情愛が澱んでいた。

 ふと思う。手元の一億円も魅力的だが、目の前のこの男――海老の殻を剥き、私のために手首を切り、金を貢いでくれる極道の若頭も……悪くないんじゃないか?

 とはいえ、夏目羽美としての矜持は保たねばなら...

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