第12章

視線がぶつかった瞬間、神崎司はドアノブを握る指先にぐっと力を込めた。顔に、ほんの一瞬だけ意外の色が走る。

机の前にいた女は――桐生麻衣?

「司、どうして来たの? 迎えに来てくれたの?」

物音に気づいた桐生麻衣が振り向く。相手が神崎司だと分かった途端、さっきまでの狼狽と苛立ちは、嘘みたいに消え失せた。

にこり、と花が咲くように笑って立ち上がる。

「言ったでしょ。桐生家のことは、私ひとりで片づけられるって。……心配なの?」

そう言いながら、彼女は自分から近づいて司の腕に絡みつく。甘ったるい声で、わざとらしく上目遣い。

「今回も司に助けてもらうことになったら、ほかの奥さまたちの前で、...

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