第29章

手塚家の広大な裏庭。その塀の上から、ちょこんと小さな頭が覗いた。

サングラスにイヤホンマイク。小さな体に装備だけはやたらと本格的だ。

少年は周囲を警戒するようにぐるりと見回し、振り返って低い声で告げる。

「安全確認。来ていいよ」

そう言うなり、塀の下へ手を伸ばしてぐいっと引き上げた。勢いのまま、もうひとり――小さな女の子が塀の上へ。

手を伸ばしたのは神崎隼人。引き上げられたのは萌々だった。

萌々は塀の縁におとなしく腰を下ろす。まるで好きなように動かせる人形みたいに、されるがまま。潤んだ大きな瞳で、きょろりとあたりを見渡した。

その虚ろだったはずの目に、初めて「探す」色が宿る。外...

ログインして続きを読む