第53章

桐生浩一は鼻で笑い、苛立ちを隠しもせずに吐き捨てた。

「俺は神崎司の顔すら拝めてねえ!」

その言葉を聞いた瞬間、さっきまでわずかに残っていた桐生麻衣の期待は、すうっと闇に沈んだ。

あの日――神崎司に、自分が桐生初夏を陥れようとしていたところを見られて以来。

司は麻衣の連絡先をすべてブロックした。弁解したくても、機会すら与えられない。

だから麻衣は、父の浩一に頭を下げた。

ひとつは、あの日の件を説明してもらうため。

もうひとつは、連れ去られた乞食を探す手がかりを、神崎司に頼むため。

だが結果は最悪だった。

浩一は神崎グループの正門前で丸一日待たされた挙げ句、最後まで門...

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