第57章

翌日、桐生グループ。

桐生初夏はアプリコット色のジャケットを羽織り、車を降りた。目の前にそびえ立つ本社ビルを見上げた瞬間、胸の奥がふっと空白になる。

――ここに来るのは、五年ぶり。

過去の記憶が次々と蘇り、唇の端に嘲りの笑みが浮かぶ。初夏は細いヒールを鳴らし、背筋を伸ばして正面玄関をくぐった。

応接を兼ねた役員室では、桐生麻衣と桐生浩一が待っていた。

「初夏。事前に用意した株式譲渡契約書だ」

浩一が書類を机の上に滑らせる。陰った疲労の顔に、無理やり貼りつけたような笑み。

「問題がなければ、サインしろ」

そこには麻衣の50%だけじゃない。浩一が持つ10%も含まれている。

この紙に...

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