第88章

「だが、君が嘘をついたこと自体は紛れもない事実だ」

神崎司は声を潜めた。「君が嘘をついた理由、それを知る必要がある」

こんな咄嗟のことで、桐生初夏も気の利いた言い訳など思いつかない。

そこでわざと意味深な笑みを浮かべ、ゆっくりと唇を動かした。

「当ててみる?」

「今日、うちの会社のPCをロックして、俺とやり合ったのは君か?」

神崎司は視点を変えて尋ねた。

初夏は引き続きもったいぶった態度を崩さない。

「そうでもあり、そうでもない、かな」

神崎司は生まれて初めて、人を走行中の車から蹴り落としたいという衝動に駆られた。

「本当のこと一つ言えないなら、何のために車に乗った?」

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