第3章
千夏視点
「里帰り」をして三週間、私は快適な日課に落ち着いていた。小さな部屋、早い起床、そして家族間の揉め事を避けること。
水を飲みに階下へ向かっていた時、由美の芝居がかった悲鳴が午後の静寂を打ち破った。
「私のネックレスがないの!」
私は階段の最上段で足を止め、眼下で繰り広げられる演劇を眺めた。
由美は大理石の玄関ホールの中心に立ち、まるで死体でも発見したかのように涙を流している。小川美智子と天野健一が彼女の周りをうろつき、その顔には心配の色が浮かんでいた。
まったく、また始まった。
「どうしたの?」小川美智子の声は心配で甲高くなっていた。
「私のティファニーのネックレスが!お祖母様が遺してくださった、あのネックレスが!」由美のすすり泣きが吹き抜けの天井に響き渡る。「今朝、宝石箱にあったのに、今はどこにもないの!」
私は一歩一歩、踏みしめるようにゆっくりと階段を下りた。
三人は、新鮮な死骸を見つけたハゲタカのように私の方を振り向いた。
「千夏、さっき私の部屋にいたわ」由美の声は囁き声に近かったが、全員に聞こえるには十分な大きさだった。「何か借りたいものがあるって……」
「あなたの部屋には入っていない」階段を下りきり、私は簡潔に言った。
由美は完璧な被害者のように無垢な目を見開いた。
「でも、お昼頃にあなたが出てくるところを見たわ……」
「見間違いよ」
天野健一が一歩前に出て、顎をこわばらせた。
「千夏、これは深刻な問題だ。あのネックレスは、我が家に三世代にわたって伝わるものなんだぞ」
お馴染みの非難の重みが、部屋にのしかかる。前の人生でも、アンティークの腕時計でまったく同じ光景が繰り広げられた。あの時の私は、声が枯れるまで泣き、懇願し、無実を訴えた。
もう、そんなことはしない。
「価値のあるものだとは理解しています」私は冷静に言った。「隈なく探したのですか?」
午後六時までには、私たちは家族会議のようにリビングルームに集まっていた。
私が中央に立つと、天野家の人々は私を半円状に取り囲み、暖炉の火が彼らの顔にドラマチックな影を落としていた。
「千夏」天野健一の声には、失望した権威の重みがこもっていた。「この家族はお前にすべてを与えてきた。食事も、住む場所も、教育も。なぜこんなことをしたんだ?」
「何も盗んでいません」
小川美智子は首を振り、その表情は完璧に作り上げられた母親の苦悩に満ちていた。「ネックレスが勝手に消えるわけないでしょう!由美がこんなことで嘘をつくはずがないわ!」
由美はティッシュで目元を押さえた。「もしかしたら、千夏がすごく気に入っちゃったのかも?だとしたら、責められないわ。とっても綺麗だもの……」彼女の声は、計算された不確かさで消え入るようになった。「ただ、返してほしいの。それだけよ」
列車にでも轢かれたかのように、強烈なデジャヴに襲われた。
――十五歳の時、地下室に閉じ込められた。暗く、寒く、たった一つの電球がコンクリートの壁を病的な黄色い光で照らしていた。食事も水も与えられず、六時間もそこにいた。信じてもらえない否定の言葉と、尽きることのない涙だけがあった。
「拓也、お願い!」泣きすぎて声は嗄れていた。「お父さんの時計は盗んでない!信じて!」
地下室の階段を上る兄の足音に、私は必死の希望を抱いた。ようやく、話を聞いてくれる人が現れた、と。
だが、天野拓也の手は私の頬を叩き、耳鳴りがするほどの衝撃だった。
「まだ嘘を吐くのか?」彼の声は冷たく、侮蔑に満ちていた。「この家に戻ってきたからって、俺たちから盗む権利があるとでも思ってんのか?」
「拓也、お願い――」
もう一発、今度はさらに強く。
「自分の立場を弁えろ」彼は唸った。「お前は施しでここにいるんだ。それを絶対に忘れるな」
天野健一が咳払いをし、記憶は霧散した。「どうだ?何か言うことはあるか?」
私は一人一人の顔を見た――天野健一の厳格な失望、小川美智子の芝居がかった心配り、由美の完璧に演じられた悲嘆。
それから私は、微笑んだ。
「みんなで由美さんの部屋を探しましょう。もしかしたら、ネックレスはどこかに落ちているだけかもしれません」
由美の顔が青ざめた。
「あ、いえ、そんな必要はありませんわ。もう隅々まで探しましたから――」
「ぜひ」私はにこやかに言った。「一組の目より四組の目の方が優れていますから」
上の階にある由美の清潔な寝室で、私は宝石箱、化粧台、ナイトスタンドといった分かりやすい場所をわざとらしく確認してみせた。小川美智子と天野健一は気乗りしない様子で捜索し、由美はドアのそばで凍りついたように立っている。
「ここにはないな」
数分後、天野健一が告げた。
「待って」私はベッドの脇にひざまずき、手を伸ばした。「この下はどうでしょう?」
私の指は、由美が昨日着ていた服の山――デザイナーもののドレスが無造作に放り投げられていた――に触れた。そのポケットの中に、十二時間前に私が置いた場所と寸分違わず、ティファニーのネックレスが私の手のひらで輝いていた。
「見つかりました」
静寂が耳をつんざくようだった。
由美の口が、瀕死の魚のように開いたり閉じたりした。「わ、私……どうしてそんなところに……」
「あなたが答えるべきでしょう」私は立ち上がり、ネックレスを光にかざして言った。「ポケットに入っていましたよ」
「きっと……つまり、忘れてたのかも……」
由美の声はひび割れ、完璧な平静さはついに崩れ去った。
天野健一と小川美智子は視線を交わし、私は彼らの頭が回転しているのを観察した。養女が嘘をついているところを捕まえたわけだが、それを認めることは、実の娘を不当に非難したと認めることにもなる。
「由美はきっとストレスが溜まっていたのよ」小川美智子が素早く言った。「特進クラスのこととか、大学の願書とかで……」
「こういうことはあるさ」天野健一も、やけに気軽な口調で付け加えた。「よくある間違いだ」
私は彼らを見つめ、胸の内に残っていた家族への忠誠心の最後の痕跡が死んでいくのを感じた。
「ええ」私は静かに言った。「ストレスのせい、ですね」
「私、家を出た方がいいと思います」
その言葉は、爆弾のようにリビングルームに投下された。
小川美智子はしきりに瞬きをした。
「家を出る?千夏、そんな必要は――」
「必要です」私は遮った。「私の存在が、明らかに皆さんを不快にさせています。由美がネックレスの場所を忘れたのも、私がここにいることで神経質になっていたからでしょう」
私は向き直り、嘘がばれてまだ青ざめ、震えている由美をまっすぐに見つめた。「妹に、自分の家で不安な思いをさせたくありません」
「千夏、出ていく必要はない」天野健一は言ったが、安堵しているのは明らかだった。「話し合って解決できる」
「私が出たいんです」私は立ち上がり、背筋を伸ばした。「どのみち、自立することを学ぶべきだと思っています」
由美はようやく声を取り戻した。
「でも、千夏、帰ってきたばかりじゃない!たった一度の誤解で出ていかないで……」
彼女の演技は今や弱々しく、仮面が滑り落ちかけている。私が彼女を出し抜いたことは分かっているが、どうやってやったのかが分からないのだ。
「ネックレスの件ではありません」私は優しく言った。「皆が順応するための時間を与える、ということです」
小川美智子と天野健一は再び視線を交わした――今度は、親としての心配事を装った、純粋な安堵の視線だった。
「もしそれがあなたの本当に望むことなら」小川美智子は慎重に言った。「私たちはあなたの決断を支持するわ」
「いい場所を見つけるのを手伝うよ」天野健一が付け加えた。「もちろん、近くの場所をね」
もちろん。私を監視できるくらいには近く、彼らの完璧な家族の力学を乱すには十分遠い場所を。
「ご親切にどうも」私は言った。「今夜から荷造りを始めます」
後で、小さな自室で一人になると、階下からひそひそ話が聞こえてきた。由美の涙ながらの謝罪、すべて大丈夫だと、千夏はただ難しい適応期を過ごしているだけなのだと彼女を安心させる小川美智子と天野健一の声。
私は微笑み、ノートパソコンを閉じた。
前の人生では、私を厄介者としか見ていない人々から、愛情のかけらを乞い求めて四年を過ごした。
今回は、私自身のやり方で去るのだ。
そして、これはまだほんの始まりに過ぎない。








