第4章

千夏視点

大家さんは分厚い眼鏡の奥で目を細め、訝しげな顔で私を見た。

「一人暮らし、本当に大丈夫なのかい?ずいぶん若く見えるが」

「十五歳です。それに、すごく自立してますから」

保護者の同意書を確認した大家さんが頷くと、私は迷いのない手つきで賃貸契約書にサインした。

大家さんは肩をすくめ、敷金を受け取って懐に入れた。

「好きにしな、お嬢ちゃん。家賃は毎月一日だからな」

二十五平米のワンルームに一人で立つ。私はこれまでに一度も味わったことのない感覚――完全な所有感を覚えていた。窓が一つしかない、配管も怪しいこの狭い空間が、私のものなのだ。許可なく誰も入ってこられない。誰にも、歓迎されていないなんて気分にさせられることはない。

この場所は隅から隅まで、全部私のもの。もう二度と、誰かに余計者扱いなんてさせない。

イケアでの買い物は、予想もしなかった形で私の心を癒してくれた。シンプルなシングルベッド、白い机、基本的な本棚。高価なものも、お洒落なものもないけれど、どれも私が、私のために選んだものだ。

小さな六角レンチで机を組み立てている間も、スマホは沈黙したままだった。家を出て三日、天野家からの連絡は一件もなかった。

それでいい。

私が通っているのはごく普通の公立高校で、由美が通う名門私立とはまったく違う。

「千夏、プログラミングは前にやったことがあるのかい?」

坂本先生が私の肩越しに画面を覗き込み、キーボードの上を飛ぶように動く指先を見ていた。

「ほとんど独学です。ユーチューブとか、ネットで見つけられるものは何でも」

他の生徒たちがまだ基本的なJavaの構文に苦戦している間に、私はとっくに課題を終わらせ、別のタブでPythonのチュートリアルを始めていた。

「マジか、もうあのアルゴリズム書いたのかよ?」ひょろりとした、ハリー・ポッターみたいな丸眼鏡をかけた石川颯太が、私の画面を覗き込んできた。「教科書のやつより、ずっと効率的じゃん!」

「プログラミングはパズルを解くみたいなものだから。この挑戦が好きなの」

私はPythonのタブを最小化した。

髪に紫のメッシュを入れた木村真央が、椅子をくるりと回転させた。

「私たちのコーディング部、入らない?火曜の放課後に活動してるんだけど」

何年かぶりに、人は私に話しかけてきてくれた。誰か大人に、養子の子も輪に入れるよう強制されたからではなく、純粋にそうしたいから。

「うん、入りたい」

坂本先生は微笑んだ。

「千夏なら、ここでうまくやっていけると思うよ」

午後十一時。インスタントラーメンと不味いコーヒーを傍らに、ワンルームで一人。ノートパソコンの画面が青い光を壁に投げかけている。ここが、私の楽園だった。

「ここのif文は最適化できるな……」

最新プロジェクトのコードをいじりながら、私は独りごちた。

木村真央からビデオ通話の着信があり、スマホが震えた。

「千夏!もう、すごいよ、あのアプリ!」彼女の顔が画面いっぱいに映し出され、その目は興奮で輝いていた。「今月だけで、私のGPA、0.5も上がったんだよ!」

「まだ序の口だよ」私はコードから目を離さずに言った。「もっと大きなアイデアがあるんだ」

「マジで、これ特許取ったほうがいいって。今や学校の半分が使ってるよ」

坂本先生でさえ、授業計画の管理に役立つからってダウンロードしたと言っていた。自分が作ったものが実際に人の役に立っている。その高揚感は、病みつきになりそうだった。

「千夏?」

木村真央の声が私を現実に引き戻した。

「ごめん、何?」

「だから、P市でIT系のスタートアップをやってる、いとこの翔太に話してみたらって言ったの。あそこ、いつもプログラマーを探してるから」

ようやく私は画面から顔を上げた。

「どんなスタートアップ?」

「テックスマートっていう会社。すっごく小さいけど、面白いプロジェクトをいくつかやってるみたい。彼に千夏のこと、紹介してみようか?」

断る理由なんてない。

「ありがたいです。ぜひ紹介してください」

テックスマートのオフィスは、S市のスタートアップの典型を絵に描いたようだった。オープンなワークスペース、卓球台、そして小規模なグループをカフェイン漬けにできるほどのコーヒーメーカー。

CEOの高田翔太は、おそらく二十五歳くらいで、「四十八時間寝てないけど、一分一秒が最高に楽しい」と叫んでいるかのような、強烈なエネルギーを放っていた。

「真央の友達の天野さんだよね?木村真央の友達の」

彼はスタンディングデスクの向かいにある椅子を指差した。

「何ができるか、見せてみて」

私はノートパソコンでスタディバディを起動し、機能を説明しながらコードの設計思想を見せた。

画面を進めるごとに、彼の眉がどんどん上がっていく。

「これ、自分で作ったの?どれくらいの期間で?」

「三週間くらいです。だいたい夜に作業して」

「マジかよ」彼は髪を手でかき上げた。「本当に十五歳?このコードの質、うちの正社員の半分より上だぞ」

「年齢と能力はイコールじゃないですから」私は淡々と答えた。「仕事がそれ自体を語るべきだと思っています」

彼はその場で私をパートタイムとして採用した。週十時間。家賃と食費を賄って、さらにお釣りがくる。人生で初めて、本当の意味での経済的自立を手に入れた。

テックスマートからの帰り道、スマホがテキストメッセージで光った。

【千夏、元気にしていますか?ちゃんと自分のことは自分で見てあげるのよ】

私はそのメッセージをしばらく見つめ、そして返信をタイプした。

「元気です。お気遣いどうも」

家を出て一ヶ月。私の「母親」からの連絡は、たったの一通。

これを気遣いと呼ぶの?一ヶ月に一通のメッセージを?。

バスを待つ間インスタグラムをスクロールしていると、由美のフィードが視覚的な暴力のように目に飛び込んできた。ブランドもののドレス、高級車、高価なレストラン。どの投稿も特権とハッシュタグにまみれている。

@yumi:「またまた最高の週末!#恵まれた人生 #F市大学 #最高の人生満喫中」

写真は、どこかF市大学の特別なイベントで撮られたものらしく、五万円はしそうなドレスを着て、インテリぶった金持ちの子どもたちに囲まれていた。

私は自分の古着のジーンズと中古のセーターに目を落とし、それからまた画面に戻った。

ほんの三秒間、嫉妬にも似た痛みが胸を刺した。

だがすぐに、自分のプロジェクトと実績でずっしりと重い、ノートパソコンのバッグの重みを思い出した。

ブランド服もパパのお金も、彼女にあげればいい。私は自由を選ぶ。

小さなバルコニーに立ち、P市のスカイラインを眺めていると、スマホがメールの通知音を鳴らした。

K市大学早期入学のメール。

メールを開くと、心臓が小さく跳ねた。数ヶ月前に木村真央が提出を手伝ってくれた私のポートフォリオに基づいた、コンピューターサイエンス特進コースへの出願招待状だった。

私は手すりに寄りかかり、微笑みながら願書を記入し始めた。遠くには、高価な宝石のようにきらめく天野家の明かりが見えた。

しかし、あの世界は今や、まるで別の惑星のように遠く感じられた。あの人々も、彼らのドラマも、自分たちが大きく感じるために誰かを小さくしようとする、あの欲求も――そのどれもが、もう私には届かなかった。

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