第5章

千夏視点

放課後、特に厄介なアルゴリズムのデバッグをしていると、木村真央がテックスタートのオフィスに飛び込んできた。その顔は興奮と、パニックにも似た何かで紅潮していた。

「千夏、これ見て。今すぐ」

彼女はスマホを私の顔に突きつけ、私は飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになった。情報メディアの見出しが、太字でそう叫んでいた。

【天野家の令嬢、まさかの転落?S市のプリンセス、最低賃金労働に身をやつす】

その下には、テックスタートに入っていく私の写真があった。明らかに無断で撮られたものだ。

「何なのよ、これ……」

記事をスクロールしていくと、段落ごとに怒りがこみ上げてくる。誰...

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