第百六章 返ってこないもの

数日後、鎌倉の邸宅。

三村天が朝霞家の資産譲渡書類一式を届けに来た。封を切った書類はすでに整っており、温音が受領確認に署名すれば、法的手続きはすべて完了する。颯真があの夜「あるべき場所に戻す」と告げてから、書類が届くまでに約二週間かかった。

温音は書斎でページをめくっていった。

てっきり颯真の気まぐれな一言だと思っていた。まさか本当にやるとは。

最後のページまで読み終え、書類をそっと閉じて机に戻した。

颯真が奥の部屋から出てきた。戸口で一度足を止め、何か言葉を待つように、微かな期待を顔に滲ませながら。

温音は顔を上げた。

「この資産は、受け取りません」

声を荒げるでもなく、ただ...

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