第二十五章 光の中へ消えて

颯真は顔を逸らさなかった。

ゆっくりと振り返り、手を伸ばして彼女の手首を掴む。力は強くないが、温音が一度引いても、抜けなかった。

「颯真と呼べ」

低い声で言った。その語気の中には、答えをすでに見つけていて、あとは最後の一手で確かめるだけだという、確固たる何かがあった。

温音は彼を見据えたまま、口を開かない。

「呼んだら」と颯真は言った。「今日のことは、なかったことにしてやる」

沈黙が二人の間に張り詰め、今にも切れそうな一本の糸のように揺れている。

視線は外さない。顎を噛み締め、筋肉をこわばらせたまま。

最後に、歯の隙間から絞り出すように——

「……颯真」

二文字。かすかに、...

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