第二十七章 夜を歩く子

お月見まで、あと二日。

鎌倉の別荘の台所に、蒸気が鍋蓋の隙間から立ち上っていた。

温音が提案したのだ。お団子は毎年作るから、今年は趣向を変えて月餅にしようと言い出した。明里はその場で頷き、心音は「お菓子を作る」という言葉を聞いた瞬間、ソファから飛び降りていた。

心音は踏み台の上に乗り、両手を生地に押しつけ、全身の力で捏ねていた。生地が押し込まれるたびに頬にも力が入り、まるで大事な仕事をこなしているような真剣な顔つきをしていた。

明里は型抜きを担当していた。蓮の餡を詰めた生地を木製の型に入れ、両手でしっかり合わせて押さえ、ひっくり返してとんと叩くと、模様のくっきりした月餅が天板の上に落ち...

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