第二十八章 夜風の残像

心音はすべてを目に収めた。

澄花がこちらへ向かって歩いてきている。芳瀬はまだその場に立ったまま、視線を心音の顔に落として、まだ何か聞きたそうにしていた。

これ以上ここにいてはいけない。

心音は芳瀬に向かって軽く頭を下げた。目元を細めたまま、柔らかな声で「おばあちゃん、さようなら」と言うと、廊下の出口へ向かって小走りに駆けだした。

足は速かった。角を曲がったところで、誰かにぶつかった。

二人、同時に足を止めた。

心音が顔を上げる。

颯真が目を落とす。

しゃがみこんで、心音をひと目見た。

「一人か?」

心音は頷いた。表情はまったく揺れていない。ごく当たり前のことに答えるような顔...

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