第二十九章 静水の下

心音が幼稚園に慣れるまで、さほど時間はかからなかった。

午前のフリータイムが終わる頃には、すでにひとかたまりの子どもたちが周りに集まっていた。特別に誘ったわけではない。ただ話しかけるときの間合いが、目が合ったときの迷いのなさが、周囲を自然に引き寄せるのだった。

その輪の真ん中に、心音は背筋をまっすぐに立てていた。顔には明るさがあり、初日だとは思えないほど、はじめからそこにいたような佇まいをしていた。

芝生の上、散り散りに遊ぶ子どもたちに陽光が落ちた。白と青、どちらも色が澄んでいた。

その輪に、ひとりの女の子が近づいてきた。

心音の前で立ち止まり、見下ろすような目線で口を開く。

「...

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