第三十八章 沈黙の底で

スマートフォンを手に取り、発信した。

コール二回で、澄花が出た。

「陸さん」

陸原照はすぐに本題へは入らなかった。他愛のない話をいくつか振り、しばらく言葉を交わしてから、ゆっくりとそちらへ話を向けていった。

「澄花さん、母が危篤だったあのとき、主治医への連絡や転院の手配は……」少し間を置いた。「具体的にどう進めたんですか?あの医師はどういうルートで?」

電話の向こうが、一拍静まり返った。

「それは……」澄花の声にかすかな躊躇が滲んだ。「ずいぶん昔のことで、すぐには思い出せなくて——」

「では、葬儀の件は」陸原照は続けた。声は穏やかなままだった。「武蔵野霊苑の、あのとき連絡した僧侶...

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