第三十九章 薔薇と灰色の真実

温音は目を上げ、彼を見た。表情は変わらない。ただ静かに視線を向け、彼が言葉を終えるのを待った。

颯真が書類をワークテーブルの上に置き、滑らせて寄越した。

温音はうつむき、ざっと目を通した。

譲渡協議書だった。

株式の五十パーセント。黒崎グループが保有し、桐島家が受け取る――条件はただ一つ、最終行に記されていた。

彼の傍にとどまること。

温音は書類を読み終え、顔を上げた。

「黒崎総裁、」声は平静だった。その平静の底に、抑えつけた何かが薄く滲んでいた。「この書類は、確認する時間をいただく必要があります」

「もう読んだだろう」颯真の声は低く押し込まれていた。「条件はそれだけだ」

温...

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