第四十章 銀杏の下で、知らない顔で

早稲田大学の正門前、石段は広く、銀杏の葉が朝の光の中で淡い金色に輝いていた。

温音は門の前に立っていた。自分がどうやってここまで来たのか分からなかった。

足取りは何かに引き寄せられるようなものだった——目的もなく、計画もなく、ただ歩いて、歩いて、気づけばここに辿り着いていた。

脳裏に、あの数字が浮かんだ。

一件また一件、見知らぬ口座へ打ち込んだ振込履歴。名前もなく、メッセージもなく、受け取り側が受け取ったかどうかさえ確認しなかった。医療費、生活費、母親の葬儀費用——どれほどの時間をかけて貯めたのか、もう覚えていない。ただ、振込完了を確認するたびに、画面に浮かんだ一行の小さな文字だけを覚...

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