第五十章 石を沈める夜

その書類を突き返した後、会議室にしばらく沈黙が続いた。

颯真は椅子に座ったまま、ドアの向こうに消えていく彼女の背中を見ていた。あの落ち着きは、どんな反応よりも処置に困るものだった。

三十億円。温音はそれを受け取った——目の前に置かれた何かを、当たり前のように手に取るように。そして静かに会話を閉じ、立ち去った。

胸の奥に何かが沈んでいく感覚があった。名前のつけられない何かが、散らずにそこに残った。


三日後、黒崎集団の周年記念晩宴だった。

颯真は温音に桐島画廊の代表として出席を求め、入場前に画廊の出資者数名を一人ひとり紹介した。紹介の言葉は簡潔で、連絡先の交換もそつなく進ん...

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