第五十四章 特別協定

山あいの別邸へ向かう山道は、両側の木々の影が深く落ちていた。

秋の気配が葉の色を暗い褐色に染め、一枚がボンネットに舞い落ちては、風に攫われていく。

前回ここへ来たとき、颯真は四歳の子どもに一本取られ、濡れそぼったスーツのまま足早に車道へ向かった。そのことは誰にも話していない。三村天も空気を読んで、何も聞かなかった。


子ども部屋のドアを開けると、泣き声はすでに止んでいた。

時雄は畳の真ん中に座り、目の前に積み木を並べて、真剣な顔で積み上げていた。古いぬいぐるみは壁際に立てかけられ、まるで傍観者のようだった。足音を聞きつけると、時雄はちらりと颯真を見上げ、また視線を落として積み木...

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