第五十五章 協定の行方

書斎の扉が閉まった。

颯真は扉の内側に立ち、ファイルから協定書を引き抜いた。最初から最後まで目を通してから、くしゃくしゃに丸め、ゴミ箱に放り込んだ。

紙の塊が桶の底に落ち、小さな音を立てた。

椅子に腰を下ろし、視線を机の上に落とす。署名はした。だが、それが遵守を意味するわけではない。彼女が必要としていた盾を与えてやった——それだけのことだ。

いかなる取り決めも、彼を縛ることなどできない。

階上では、温音が部屋の鍵をかけ、ファイルから協定書を取り出して丁寧に伸ばし、ベッドサイドの引き出しへ収めた。引き出しを閉めると、錠が噛み合う音が聞こえた。

同じ一枚の書類。二つの扱い方。

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