第六十一章 五億円の賭け

テーブルの上の空気は、重く沈んでいた。

颯真が箸を置き、目を上げた。

「今日は何か予定がある?」

温音は顔を伏せたまま、とうもろこしをひと切れ挟んで口に運び、ゆっくりと噛んだ。すぐには答えなかった。

昨夜はほとんど眠れなかった。五億円の小切手のこと、澄花が颯真に送った密告メッセージのこと、今夜八時のあのテーブルのこと——ひとつひとつを頭の中で何度も繰り返し、細部まで確かめて、ようやく夜明け前にまぶたを閉じた。

「夜に友達と約束があって。早めに帰るから」

声は平坦だった。どうでもいいことを告げるような、そんな口調で。

颯真の瞳が、ゆっくりと、しかし深く沈んだ。茶碗を手に取り、すぐに...

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