第六十四章 亀裂と誕生日前夜

数日後の午後。

澄花が再び面会を求めてきた。今度は法律事務所ではなく、明里のマンションだった。

部屋の中央に立ち、指の関節を白くしながら、澄花はようやくその言葉を吐き出した。

「——残りの人生、衣食に困らない額を用意します。これで、十分でしょう」

明里はソファに座ったまま、ゆっくりとその言葉を繰り返した。

「十分?」口角がわずかに上がった。「朝霞さん、私がお金に困っている人間に見えますか」

澄花の顔色が変わった。

こんな答えが返ってくるとは思っていなかった。金は万能だと、数字さえ十分大きければどんな問題も片付くと信じていた。

「あなた——」

「ここに来たのは」明里が遮った。...

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