第六十五章 暗転

二人の影が完全に視界から消えるのを確認してから、颯真はエンジンをかけた。

大宅とは逆の方向へ。

世田谷区、明里のマンションの前。颯真は車を暗がりに停め、エンジンを切った。

二階の窓に灯りがともっていた。カーテンは完全に引かれておらず、薄い布地の上に二つの人影が浮かび上がっている。時折近づき、時折静止する。言葉は聞こえない。それでも、あの緩んだ、無防備な親密さは、否応なく伝わってきた。

颯真はハンドルに手を押しつけたまま、動かなかった。

灯りは消えない。

深夜十一時を過ぎても、まだ消えない。

空港からずっと胸の底で渦巻いていたものが、この瞬間、完全に溢れた。颯真は三村天の電話を呼び...

ログインして続きを読む