第六十六章 生日

薬が効き始め、温音の視界を覆っていた漆黒が、ぼんやりとした光の滲みへと変わっていった。

張り詰めていた神経がわずかに緩み、彼女は病床にもたれかかって、窓の方向へ視線を向けた。はっきりとは見えない。ただ白い光の塊があるだけだ。けれどそれだけで、すべてを飲み込む暗闇よりはずっとましだった。

颯真がベッドの傍らに立ち、コップを手に持っていた。

「水を飲んで」

温音は顔を背けた。

その声が誰のものかはわかっていた。差し出される手が何を持っているかも。それでも受け取りたくなかった。ただその人に、もっと遠ざかってほしかった。もっと、もっと遠くに。

「自分でできます」

声は硬く、壁のようだった...

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