第六十九章 鏡の前で、料亭にて

朝の光は、まだ薄い冷たさを帯びていた。

温音は鏡の前に立ち、襟元を整えていた。指先が衿の縁を辿り、ある一点でふと止まる。

俯いて確かめることはしなかった。

ただひと拍だけ止まり、それから何事もなかったように衿を直して、寝室を後にした。


黒崎グループ本社の会議室。ガラス張りの壁の向こうには、東京の灰白い空が広がっていた。

颯真は上座に座り、向かいの白崎方の代表と提携枠組みの細目を詰めていた。温音はその斜め後ろに控え、手のつけられていない茶が一杯、目の前に置かれている。視線は書類に落とし、表情は静かだった。

議題が第三条項へ差し掛かった頃、ドアが二度、静かに叩かれた。

三村...

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