第七十章 夜の傷跡

画室の光は薄かった。

秋の庭が窓の外に広がり、枯れ葉が一面に敷かれていた。風がときおり枝を押し下げ、また離していく。温音は画架の前に座り、筆を握ったまま、穂先をキャンバスの寸前で止めていた。なかなか下ろせなかった。

颯真は今日、外出している。三村天が手配した人間はまだいる——廊下から時折聞こえてくる足音がそれを教えてくれた。でも少なくとも、背後に誰かが立っているわけではない。うなじに視線が落ちてくるわけでもない。

この束の間の独処は、ここ数日の中でようやく掴めた数少ないものだった。

スマートフォンが震え、画面が光った。

時透からだった。

彼女は電話に出て、端末を耳に挟み、もう片方...

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