第八十一章 朝霞澄花の計略

芳瀬が書斎を出たあと、廊下にしばらく立ち尽くした。

颯真の言葉が、まだ耳の奥に残っていた。

私のことは、あなたに関係ありません。

あの子は昔、こんな言い方をしなかった。家族のために、集団のために、長年ずっと隠忍自重してきた——それが黒崎颯真という人間だった。それなのに今夜、あの目で、あの声で、そう言った。

芳瀬はゆっくりと歩き出した。足取りが重かった。

廊下の突き当たりで立ち止まり、窓の外を見た。暗い庭に、石灯籠の灯りだけが静かに揺れていた。

あの桐島家の女が——。

芳瀬は唇をきつく引き結んだ。今夜のことは、ひとまず胸の奥に収めておくしかない。だが、このまま終わらせるつもりは...

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