第八十二章 檻の外へ

軟禁されて最初の一時間、雪音はベッドの端に座ったまま、動かなかった。

通信機器は没収された。警護は交代し、出入口に二人、廊下にも見張りがいる。逃げ道をひとつひとつ頭の中で数えた。どれも、塞がれていた。

時雄は連れ去られた。

行動も封じられた。

二本の命綱が、同時に断ち切られた。

膝の上に置いた手を、ゆっくりと握りしめ、また開いた。

その時、枕の下でかすかな振動があった。

颯真の部下には見つかっていない衛星電話だった。取り出すと、画面が光っていた。

発信者:雪人。

声を極限まで抑えて、電話に出た。

「姉さん」受話器から雪人の声が届いた。焦りはあったが、揺れていなかった。「そっ...

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