第八十八章 夜が明けるまで

「送ってくれ。」

颯真の声がソファの向こうから聞こえた。しゃがれていて、酔いを帯びていたが、意外なほど落ち着いていた。目は閉じたまま、眉をわずかに寄せ、何か清醒な部分を保とうとしているように見えた。

温音はその場に立ち、しばらく彼を見つめた。

「三村を呼んで。」

「……三村じゃ、だめだ。」

彼女はすぐには答えなかった。

颯真の手が肘掛けの上でかすかに動いた。持ち上げることはなかった。何かを掴もうとしているのか、ただの本能的な反射なのか、判然としなかった。

温音は小さく息をつき、ソファへと歩み寄った。


三村天は個室の外でもう待機していた。

温音がドアを押し開け、一...

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