第4章

午前九時、全日本体操選手権の会場は、期待と興奮の熱気で満ちていた。だが、私の目に映る家族席の光景は、もはや何の感慨も湧かない、安っぽい三文芝居に過ぎなかった。

六メートルほど離れた場所から、私は父が真理の額に優しくキスをするのを見ていた。まるで彼女が、かけがえのない宝物だとでもいうように。その光景のすべてが、胃の腑を逆撫でする。

「大丈夫だ、真理」彼は囁いた。かつては、私だけのために使われた温かい声色で。

兄の山田敦が、熊のように真理を抱きしめ、その場でくるくると回す。

「我らが小さなスターが、この場所を照らしてくれるぞ!」

『我らが小さなスター、ね』

私は彼らの陳腐な茶番劇を、冷え切った瞳で眺めていた。なんて早く、私という存在を、この真新しいおもちゃと取り替えてしまったのだろう。

その間、私はまるでそこに存在しないかのようだった。父は一度だけ――たった一度だけ――こちらに視線をよこした。それは、道端の汚れた野良犬でも見るかのような、侮蔑に満ちた眼差しだった。キスも、抱擁も、激励の言葉もない。

結構だわ。私はチームジャケットの襟を整えた。せいぜい衆人環視のこの場所で、その本性を晒すがいい。

やがて、レポーターがカメラクルーを連れて父に近づいてきた。

「山田さん、今日のお気持ちはいかがですか」

父の顔が、ぱっと輝く。

「娘の真理は、山田家の誇りです。あの子の献身と純粋な心を、私は心から誇りに思います」

レポーターはさらに食い下がった。「では、山田佳織選手については?」

彼の表情は、瞬時に氷のように冷たくなった。

「山田佳織は、我々の一族の名にふさわしい人間であることを、まず証明する必要があるでしょうな」

『ふさわしい、か』

その言葉は、かつての私なら胸に深く突き刺さっただろう。だが代わりに、私の唇には自嘲的な笑みが浮かんでいた。あれだけの――あれだけの血の滲むような練習と、あらゆる犠牲を払った後で――私が、自分を証明する必要がある、ですって?

いいでしょう。今日、あなたたちに〝ふさわしい〟とはどういうことか、きっちり見せてあげる。そして、あなたたちこそが、最初から私を手にする資格などなかったのだと、骨の髄まで思い知らせてやる。

競技開始の一時間前、器具をチェックしていると、何かがおかしいことに気づいた。私の炭酸マグネシウム――演技中に手のひらが滑るのを防ぐ、あのチョークの粉――を指の間でこすると、質感がいつもと違った。粒子が細かく、妙に滑らかな感触がする。

『……クソが』

誰かがタルカムパウダーを混ぜ込んだのだ。最悪の瞬間に器具から手が滑り落ちるのに十分な量を。前の人生で、まさしくこの妨害工作のせいで、私はジュニア全国大会のメダルを逃したのだった。

私の心拍数は、完璧なまでに安定していた。パニックも、恐怖もない。ただ、冷たく計算高い満足感だけがあった。

「山田佳織!」

田中隆の声が聞こえ、その偽りの心配を浮かべた表情で近づいてくる彼に、肌が粟立つのを感じた。

「今日の準備は万全か? これは君が自分を証明する絶好の機会だぞ」

私は、すべてを見透かすような笑みを浮かべて見上げた。

「ええ、準備万端以上ですよ、コーチ。今日は……きっと、忘れられない一日になります」

彼はその言葉に含まれた毒に全く気づかず、熱心に頷いた。

「真理が最近、君のことをとても心配していてな。二人とも良い結果を出してほしいと、心から願っているんだ」

「ええ、きっとそうでしょうね」私は砂糖菓子のように甘い声で応えた。

田中隆が去った瞬間、十メートルほど先に真理の用具バッグがあるのが目に入った。彼女はトレーナーに足首のテーピングを巻いてもらっており、会話に完全に夢中になっている。

絶好の機会。

私は何気なくそちらへ歩み寄り、流れるような一連の動作で、私たちのチョークバッグをすり替えた。私の演技を台無しにするはずだった毒入りの粉は、今や真理の破滅の引き金となる。

『自分の薬がどんな味か、試してみるといいわ、真理』

私は弾むような足取りで、その場を離れた。

最初の種目に臨むため足を踏み入れた競技フロアは、完全に私の領域だった。目の前には青い助走路が約束のように伸び、その先には跳馬台が――私を重力から解き放つ、あの革張りの踏み台が待っている。

「続きまして、山田佳織選手」アナウンサーの声がアリーナに響き渡った。

私はすべてを遮断した。観客も、審判も、かつての家族も。これは純粋な体操競技。そして私は、なぜ自分が最高なのかを、ここにいるすべての人間に思い出させるのだ。

助走を始める。青いカーペットを完璧なリズムで踏みしめ、一歩ごとに力を増していく。爆発的な力で踏み切り板を蹴り上げ、私の体は空高く舞い上がった。その飛翔の瞬間、体をきつく丸めて後方に二回宙返りし――そしてミサイルのように体を解き放ち、着地マットに両足を叩きつけた。

着地の衝撃が分厚いマットを揺らしたが、私の脚はその衝撃を完璧に吸収した。一歩たりとも動かない。吸い付くような、完璧な着地。

観客が、割れんばかりの歓声でどっと沸いた。

「素晴らしい! 山田佳織、完璧な出来栄えです! これはまさしく、オリンピックレベルの演技ですよ!」

私はカメラに向かって満面の笑みを浮かべた。これで〝ふさわしい〟ことの証明になったかしら、お父さん?

次に真理の番が来た。私が仕込んだグリップの不具合が、すでに彼女の演技に影響を及ぼしているのを、私は冷徹な興味を持って見つめていた。彼女はいつもの技術で助走路を駆け抜けたが、踏み切り板を蹴ってひねりを加えた後方宙返りに移った瞬間、すべてが狂った。

跳馬から体を押し出す際、手のひらが滑り、十分な力を伝えられなかったのだ。着地で後ろによろめき、必死に三歩踏み出してなんとか持ちこたえたが、転倒寸前だった。表示されたスコアは、いつもより丸々一点も低い。

「山田真理選手、らしくないミスですね」アナウンサーの声には、戸惑いの色が滲んでいた。

フロアの向こうから、真理の信じられないといった視線が私を捉えた。私は彼女に小さく手を振って見せる。その笑顔は、天使のように無邪気だった。

最終種目――ゆか運動――に到達する頃には、真理は目に見えて精彩を欠いていた。グリップを変えるたびに手が滑り、その顔には焦りと苛立ちが浮かんでいる。

私はキャリアを通してこの十二メートル四方の空間を支配してきたが、真理にとっては、これから個人的な地獄と化す場所だった。

「できない……」彼女が手のひらにチョークをつけながら囁くのが聞こえた。「なんで、こんなに滑るの……」

彼女は美しく演技を始めたが、技を繰り出すたびに疑念が忍び寄っていくのが見て取れた。自信に満ちた表情は、次第にパニックに近いものへと変わっていく。

決定的な瞬間は、三つ目のタンブリング――何千回と練習してきた、ひねりを加えた後方宙返りの連続技――で訪れた。宙に舞い上がり、体を回転させたとき、グリップの不具合が彼女の空間認識能力に致命的な影響を及ぼしたのだ。

真理は着地で回転が足りず、足が不自然にマットを叩いた。前によろめき、両腕を風車のように回して、必死にラインの内側に留まろうとする。心臓が止まるかと思う一瞬、私は彼女が完全に転倒するのではないかと思った。だが、彼女はどうにか体勢を立て直し、演技を終えたものの、その表情は明らかに動揺していた。

「山田真理選手、らしくない苦戦が続きます。今日はいつもの正確さを維持するのに、本当に苦労しているようです」

スコアは彼女の苦戦を如実に反映していた。いつもより、丸々二点も低い。

その後、私のそばを通り過ぎる際、真理は悔しさと、芽生え始めた疑念に満ちた目で私を睨みつけた。

いい気味だ。せいぜい不思議に思うがいい。そして、恐怖するがいい。

一時間後、首に金メダルをかけて表彰台の一番高い場所に立つと、観客席に父の姿が見えた。その顔には困惑と、そして後悔の最初の兆候かもしれないものが混じっていた。

レポーターが私にマイクを突きつける。

「山田佳織選手、妹の真理選手が大苦戦する中、圧倒的なパフォーマンスでの優勝となりましたが、何か思うところはありますか」

私はまっすぐカメラを見つめた。

「名前だけでふさわしい人間になれると勘違いしている人もいるようですね。今日、才能はどんな家柄よりも雄弁だということが、証明されたと思います」

その後、駐車場で、真理の不振にまだ動揺している様子の父を見つけた。

「もしかしたら……我々は、少し考え直す必要があるのかもしれない」彼は、誰に言うでもなく呟いた。

私は彼の隣に立ち止まり、ぞっとするほど静かな声で言った。

「選択をしたのは、お父さんよ。これはほんの始まりに過ぎないわ」

立ち去りながら、勝利の満足感が全身を駆け巡った。真理は動揺しているが、まだ打ちのめされてはいない。来るオリンピック最終選考会を面白くするには、まだ十分に危険な存在だ。

だが、ふと振り返ったとき、私の血の気が引くような光景が目に入った。真理がチームバスのそばに立ち、私をじっと見つめていた。その瞳には、彼女が演じてきた無垢な少女の面影は、もはや微塵もなかった。

その瞳は、宣戦布告をしていた。

そして本当の戦いは、まだ始まったばかりだった。

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