第213章 交渉

その言葉を口にした途端、父はふっと顔を横に向けて私を見た。瞳の奥にはいくつもの感情が渦を巻いていて、いつもなら沈着で威厳のあるその顔が、今は苦しげに歪んでいる。さっきリビングで瀬川庭山に向けていた、あの冷え切った硬さは跡形もない。

「凪紗。父さんだって道理がわからないわけじゃないし、君の伯父さんをかばってるわけでもない。ただ……」

言葉が途切れる。喉仏がごくり、と上下した。どう切り出せばいいのかわからないみたいに逡巡して、最後は深いため息を落とす。掠れた声だった。

「瀬川家に残ってる血縁なんて、もうこれだけだ。おじいさんは早くに逝って、最期に俺の手を握ってな……兄貴を頼む、家を頼むって...

ログインして続きを読む