第26章 食事

私は白目をむきつつ、目の前の料理をゆっくりと口に運んだ。

腹が満たされて、ようやく身体の芯にじんわり熱が戻ってくる。

「こっちは仕事で必死なの。あんたみたいに働かなくていい人には、わかんないでしょ」

そう口にしてから、松井美菜がこの前ちらっと触れた神崎倫司の家の話が頭をよぎった。

――あ、今の、まずかったかも。

「……あ、そうだ。あなた、毎日何して忙しいの?」

慌てて話題を変えると、隣の神崎倫司は、私のわざとらしさを見透かしたみたいに小さく笑う。

「まあな。凪紗と比べたら、俺は暇人だよ」

それから、ふっと遠くを見る目になった。

「昔は、何も考えずにフラフラしてた。どこへ向か...

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