第51章 奥様はお聞きますか

彼女の動きに気づいた。手がふわりと持ち上がった、その刹那――私は素早く「光希」と呼ばれた女を引き寄せ、盾みたいに自分の前へ押し出した。

「きゃっ!」

甲高い悲鳴と同時に、白い服の女が手にしていた赤ワインが、そのまま光希へぶちまけられる。

「吉田紀保、あんた頭おかしいの!?」

光希は悲鳴のあと、白い服の女に向かって怒鳴りつけた。

「光希! ごめん、ごめん……!」

吉田紀保は慌ててウェットティッシュを掴み、光希の服を拭こうとする。

光希は苛立った手つきでそれをひったくり、顔へ乱暴に押し当てた。振り返った視線が、獲物を睨みつけるみたいに私へ刺さる。

「このクズ……私を盾にするとか、...

ログインして続きを読む