第82章 実の兄ではない

川島梨菜は露骨に顔をしかめた。

「もう、その人の話はいいって。次、どこ行く?」

私は少し考えてから言う。

「もうすぐお昼だし、近くで食べよう。ホテルのレストランとか」

「賛成」

食事という言葉が出た途端、梨菜の機嫌が目に見えて持ち直した。

「近くにね、すごく美味しいお店があるの。そこ行こ」

「いいよ」

運転手が梨菜の言った店の前で車を停めた。ホテルのロビーに足を踏み入れた瞬間、遠目に見覚えのある背中が目に入る。

思わず笑ってしまった。狭いな、ここ。さっき話題にしたばかりの相手に、こんなタイミングで出くわすなんて。

私は梨菜の肩を軽く叩く。

「ほら。あれ、誰だと思う?」

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