第89章 後悔しても遅い

「おまえ……!」

 父は顔を真っ赤にして怒鳴りかけたが、いったん言葉を飲み込み、歯を食いしばるようにして言った。

「……そうだ。父親として、いや、父が頭を下げる。東拓を助けてくれ」

「話が早い」

 俺は立ち上がり、服に付いてもいない埃を払う仕草をする。

「安心しろ。あいつの全身なら、ちゃんと連れ帰ってやる」

「神崎倫司!」

 背後で父の怒号が炸裂し、次の瞬間、机の上の茶杯が掴み上げられ、床へ叩きつけられた。

 ガシャン、と乾いた音。破片が飛び散り、足元にガラスが散る。

 その大きな物音に、部屋の外に控えていた使用人たちが顔を覗かせた。

「何見てる! 失せろ!」

 一喝さ...

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