第5章 危険

冬の魔法祭りの前夜、屋敷には異様な寒気が漂っていた。

私は窓辺に腰掛け、月光を浴びて庭の魔法氷晶が煌めくのを、ただ眺めていた。

突如、慌ただしい足音が夜の静寂を破った。

「フィリア様、姫殿下が至急、寝所へお越しになるよう、と」

侍女が半ば駆け込むようにして告げた。その声には、隠しきれない恐怖が滲んでいる。

私は静かに手にしていた魔法のスクロールを置くと、侍女の後に続いて長い廊下を渡った。エリノ姫の寝所の前には、顔面蒼白の侍女たちが数人控えており、私を見るなり、その目に一縷の望みを宿したようだった。

扉を開けると、エリノ姫がベッドに横たわっていた。大きく膨らんだお腹が不規...

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