第7章 苦しみ

半年後。エリノ姫が、再び子を宿した。

私は父上の魔法実験室の扉の外に立ち、その隙間から中の様子を窺っていた。王家に仕える侍医がエリノを診察している。

姫は、かつての傲慢さが嘘のように静まり返っていた。ただ何度も、わずかに膨らんだ自身の腹を撫で、虚ろな眼差しで宙を見つめている。

「魔術師様」

医師は診断用の魔水晶を仕舞うと、父上に小声で告げた。

「姫殿下の御心は、極めて不安定な状態にございます。まるで、いつ砕けてもおかしくない薄氷のよう。これ以上の衝撃は、どうか……さもなければ――」

「さもなければ、どうなる」

父上は表情ひとつ変えずに訊ねた。

「姫様の精神が崩壊し、お...

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