第100章

木箱――!

安野香苗は、そう言われた瞬間に思い出した。

母の遺した木箱。確かに一つあった。けれど、いつの間にか消えていた。

なくなったんじゃない。安野弘人が隠し持っていたのだ。今日この場で、自分を脅すために。

人は、ここまで恥知らずになれるのか。

香苗は、殺してやりたい衝動に喉の奥が熱くなるのを感じながら、相手を睨みつけた。

『安野弘人、あんたは本当に卑怯な男ね。うちの母さんも、よくそんな男と結婚したものだわ。母さんがいなかったら、あんたなんて今でも貧乏人だったくせに。母さんの力で得したくせに、浮気して、母さんを追い詰めて、死なせて……そのうえ、母さんがいなくなってからも利用する...

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