第104章

母の形見であるその鍵を指先で弄びながら、安野香苗はぼんやりと机に向かっていた。藤原京也が入ってきたことにも気づかない。

目の前に手が伸びてきて、彼女のデスクをとん、と軽く叩いて、ようやく我に返った。

「先輩、どうかしましたか?」

はっとして顔を上げ、安野香苗は反射的にそう尋ねる。

藤原京也は椅子を引いて彼女の向かいに腰を下ろした。深い色の瞳がまっすぐ香苗を映す。数秒の間を置いてから、男は静かに口を開いた。

「何か悩みごとか? 午前中ずっと上の空だっただろ」

しばらく彼女の様子を気にかけていたのだろう。何かあったのではないかと心配して、わざわざ時間を作って来てくれたらしい。

そう...

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