第105章

子どもの頃、母は自分の誕生日を暗証番号にするのが好きだったことを、彼女は覚えている。

――これも、そうなのだろうか。

確認キーを押した瞬間、安野香苗の胸がきゅっと縮んだ。

数秒の待機ののち、金庫はあっさりと開いた。

中にぎっしりと書類が詰め込まれているのを見て、香苗は目を見開く。

『……これ、何ですか?』

支店長は穏やかに笑みを浮かべた。

『安野さん。中身をご覧ください。こちらは木山そらさんが安野さん名義でご購入された株式や債券などです。長年にわたり、当行の専任担当が運用をお手伝いしておりました』

その言葉を聞いた途端、香苗の指先が止まらないほど震えだした。

『……ここにあ...

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