第109章

十数分も泣き続けて、翔太はようやく安野香苗の胸元から顔を上げた。小さな手で頬をこすり、照れくさそうに目を伏せる。

『お母さん、痛くない?』

香苗の左手に巻かれたギプスを見つけ、翔太は不安そうに問いかけた。

昨日、お母さんが抱きしめて庇ってくれなかったら、ぶつかったのは自分だった。

香苗が地面に倒れ、ぴくりとも動かないのを見た瞬間、心臓が止まるかと思った。

目を赤くして、まだひくひくと肩を震わせる翔太に、香苗はそっと口元をゆるめる。

『痛くないよ。翔太、教えて。どうして病院に来たの?』

様子からして、この子は一人で来たのだろう。

『お母さんが心配で……会いに来た』

香苗は翔太...

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